【手漉き和紙の作り方】

教えて頂いたのは「丹頂紙業株式会社」さんです。
 〒409-3301 山梨県南巨摩郡中富町西嶋1197
 Tel:0556-42-2155

 ※基本的に一般の方の工房見学はできません。

1.煮熟(しゃじゅく)

tesuki-line01紙の原料である繊維質を多く含んだ植物の楮(こうぞ)や三椏(みつまた)を煮ます。
煮ることで紙漉に必要な繊維質だけを取り出します。
写真は取り出した楮の繊維。

2.叩解(こうかい)

tesuki-line02繊維質をさらに細かくほぐします。
0字型をしたプールに水と煮熟した原料を混ぜ、攪拌していきます。
原料が水に対し5%から3%になるまで叩解していきます。
写真は叩解が終わる直前の原料。綿のようにふわふわと水に浮いています。

3.叩解終了

tesuki-line03叩解した原料は、一度脱水を行います。
その後再度水に溶かし「とろろあおい」を混ぜます。
とろろあおい(黄蜀葵)は葵科の植物で、黄色い大型の花をつけ、晩夏に咲く植物です。このとろろあおいの根を使います。
写真は叩解が終わり、一度脱水している様子。

4.紙漉き その1

tesuki-line04とろろあおいを混ぜた溶液を船(木枠とすだれからできています。すだれは取り外せます)に流し込み「紙を漉く」という作業を行ないます。

その昔は船の下にある溶液槽へ船を沈め、船を持ち上げることで溶液から紙の素を濾して紙を漉いていました。
小さい船ならそれほど難しくはないでしょうが、全判(約138cm x 70cm)のように大きな紙になると、均等の厚みで漉くことが難しくなってしまいます。船が少しでも傾くと溶液が偏ってしまい、1枚の紙で左と右で厚みが違うなんて事になってしまいます。

そこで考え出されたのが現在の漉き方。船を固定して、上から溶液を流し込みます。
溶液が船に均一に流れ込むよう工夫されているため、熟練の技を要することがなく(といっても簡単ではありませんが・・・)作業効率、製品としての完成度、ともに格段に良くなったそうです。

流し込まれた溶液は船の上で水分と原料に漉し分けられ、すだれに紙の素が残るのです。

5.紙漉き その2

tesuki-line051枚の紙が均一に漉くことができる優れた機械ですが、水を流し込むのは人間が行なっています。(足元に溶液を流し込む口を開けるスイッチがあって、踏んでいる間口が開きます)つまり作る全ての紙が均等な厚さにするには、長時間の集中力と経験に裏打ちされた熟練の技術が必要なのです。

すだれに漉し残った紙の素を1枚ずつ丁寧に重ねていきます。
この時点の紙の素は、ふるふるの豆腐のようです。とろろあおいによって結びついているだけで「2.叩解」とあまり差がありません。

すだれを扱う時に水滴が落ちないよう細心の注意を払うそうです。水滴が重ねた紙の素に落ちたらほぼ全てがパーに・・・。

6.紙漉き その3

tesuki-line06熟練の漉き手は1日に3千から4千枚漉くそうです。
1日中立ち仕事のうえ、集中力が必要となるこの仕事。加えて水は冷水。お伺いした夏はまだ良いのですが、冬になると・・・考えただけで痛いですね。

すだれで漉すために紙自体に簾目(すのめ:すだれの跡)が透かしのように残ります。この簾目が手漉き和紙の象徴ともいえます。

7.乾燥

tesuki-line07豆腐状の紙の素は一晩放置して水抜きをします。さらに圧さく機で脱水した後、天日で乾燥させます。カッチカチの板状(写真の状態)になるまで10日間ほどかかるそうです。

乾燥の目的は1枚ずつの紙の中で、繊維同士の結びつきを強くするためだそうです。漉きあがった状態で乾燥させれば良いように思いますが、それでは繊維の結びつきが弱く、破れやすい紙になるそうです。

『だからといって、こんなにカチコチでどうすんだろう?』と思っていたら次の工程がありました。

8.仕上げ その1

tesuki-line08カッチコチに乾燥した紙の素は、一枚一枚はがせるようになるまで水に浸します。

浸しすぎるとはがす時に破れ、水が足りないとはがれないそうです。
当然なんですが、そこに経験による言葉の重みを感じました。だってこの一塊から4千枚近くをはがしては乾かさなくちゃいけないんだから・・・。

9.仕上げ その2

tesuki-line09いよいよ今まで「紙の素」であった物が「和紙」に生まれ変わる瞬間です。

大きな鉄板(2m×4mくらいかな)が作業場には4枚あり、これをバーナーで熱します。大きなアイロンですね。
そこに先ほどの紙の素の塊から1枚ずつはがしながら貼り付けていきます。
言葉にするととってもあっけないのですが(実際に作業をしているおばちゃんたちもあっけなく、淡々と作業してますが)、そこには高度な技術と集中力が必要なのです。

大きなアイロンが4つ。冬でも汗をかく作業場ですが、クーラーはおろか窓も開けられないとの事。
風が邪魔して作業がやりにくいそうです。

10.裁断

こうして出来上がった和紙は、1枚1枚品質を確認し、製品ごとに裁断されます。

裁断は、その昔は人力で行なっていましたが、今は機械で行なうそうです。西島地区では製紙業が盛んで、共同で裁断機を購入し、共有しているそうです。

今回は残念ながら裁断の様子を見ることができませんでした。